理論化学会第三期会長を拝命しました北海道大学の武次徹也と申します。理論化学会は2019年にスタートし、初代会長を中井浩巳教授、第二期会長を森田明弘教授が務め、2023年秋より第三期に入りました。昨年には日本学術会議協力学術研究団体としての承認を得ており、会員数は現在個人会員381名、賛助会員4社、法人会員5社に達しています。理論化学会の前身は1997年4月に日本化学会のもとに発足した理論化学研究会であり、設立メンバーの平尾公彦先生が実行委員長として第一回理論化学討論会を開催されました。以来、理論化学討論会は理論化学・計算化学分野の研究の最先端を議論する場としてほぼ毎年開催され、2024年5月には第26回理論化学討論会が筑波で開催される予定です。理論化学研究会は主に理論化学討論会の開催をミッションとして引き継がれてきましたが、コンピュータ性能の不断の向上により研究対象が大規模化・複雑化・精密化し、その結果として理論化学・計算化学のプレゼンスが幅広い化学分野で上進した時代背景もあり、理論化学コミュニティの結びつきをより強固にするために学会化に踏み切りました。当該分野では計算化学という側面だけではなく、福井謙一先生、諸熊奎治先生から脈々と繋がる伝統を引き継ぎ、理論化学の側面でも日本独自の理論の深化や計算領域の拡張が行われています。

 理論化学会が発足した2019年の翌年、コロナ感染症が世界を覆い、人々の生活は一変しました。研究活動においても多くの国際会議がオンライン開催へと切り替わり、大きな影響を受けています。北海道大学で2020年9月に開催すべく準備を進めていた理論化学・計算化学の国際会議TACCもコロナ禍のため延期を余儀なくされましたが、2023年9月にようやく開催が実現し、シニアな研究者にとっても若手研究者や学生にとっても改めて対面会議の良さを認識する機会となったように思います。

 理論化学会第三期では、国際交流の活性化を重点課題とし、さらに会誌フロンティア、若手へのサポート(顕彰、スクール)、産学連携などをより充実させ、理論化学コミュニティの発展に貢献していきたいと考えています。理論化学会へのご支援をよろしくお願い申し上げます。

北海道大学大学院理学研究院
武次 徹也